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法の公正なプロセスを犯した海保官の動画流出
 法の公正なプロセスを犯した海保官の動画流出


 神戸海上保安部勤務の海上保安官が、尖閣諸島沖において中国漁船が海上巡視船に衝突する様を差撮影したビデオをネットの動画サイトにアップロードしました。

 これは公務員の守秘義務違反です。今の日本の情報公開法では、首相が外交関係を損ねると判断すれば、政府情報を開示しないことを定めています。これは国民の暮らしを守るためです。一海上保安官の独断で、この法の公正さが破られました。これが今回の守秘義務違反の結果です。

 法律が公正なプロセスを経て運用されるのは、わたしたちの暮らしにとって大切なことじゃありませんか。だって、法的根拠もなく誰かの都合で政治が決まってしまうんです。

 今回のビデオ流出事件の受け止め方や裁き方も、法の公正な運用の範囲内でしてもらえませんか。その方がずっと有意義です。

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木目画像未来のために過去の類似事件をふり返る木目画像   


 この海上保安官の犯罪について、逮捕は不当あるいは罪を不問にするべきという擁護意見もあります。愛国心がある行動だから国民主権を守ろうした行動だからが、その根拠です。

 さて、気持ち真面目に読んでいただけないでしょうか。人間には知能があり将来を予測して行動できますよね。そこで、今回の犯罪を無罪としたら日本がどんな国になるのか、考えてみませんか。想像してみるのに、過去の歴史を振り返ると、とっかかりに良いですよね。

 そこで二つの過去の例を挙げてみます。司法の独立を守ったケースと金融恐慌が起こったケースです。いずれも今回のビデオ流出事件と類似する事件です。

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木目画像裁判が公正に運用された大津事件木目画像

 政府の不当な圧力に屈せず、司法が殺人未遂犯に公正な判決を下した日本の過去があります。大津事件と呼ばれています。

 1891年(日露戦争も日清戦争もまだ起こってません)、日本を親善訪問中のロシア皇太子に沿道を警護していた津田巡視が切りつけた事件です。簡単に言えばテロです。ロシア皇太子は一命を取りとめたため、津田巡視は殺人未遂として裁かれることになりました。

 当時の日本の国力ではロシア帝国の軍事力にはかないません。ロシアの外圧をかわしたい明治政府は、津田巡査を死刑にすることを謀りました。しかし、当時の日本の法律では死刑にできないと、法論議では結論が下されました。当時の日本の刑法では、殺人未遂罪に死刑は適用できないからです。ここで当時の法論議を振り返ってみます。

  まず、大逆罪を適用して津田巡視を死刑にする意見は、大逆罪は天皇家への罪を裁くもので外国の皇族は対象外ではないと、却下されました。

旧刑法

第二編 公益ニ関スル重罪軽罪

第一章 皇室ニ対スル罪

第百十六条 天皇三后皇太子ニ対シ危害ヲ加ヘ又ハ加ヘ ントシタル者ハ死刑ニ処ス
 そこで元老の伊藤博文は戒厳令を敷き死刑にすることを主張しました。戒厳令が発令されると、司法権が軍の司令官に移るからです。そうすれば、津田巡査を 大逆罪で死刑にすることもできます。量刑判断は司法権を委ねられた軍司令官がするからです。ただし、この案はさすがに政府内でも通りませんでした。

戒厳令

第11条(抜粋)

 合囲地境内二於テハ軍事ニ係ル民事及ヒ左二開列スル犯罪二係ル者ハ総テ軍衙二於テ裁判ス

刑法

「第2編」

「第1章  皇室ニ対スル罪」
 結局、津田巡査には謀殺故殺罪(現在の殺人罪にあたります)の未遂罪を適用して、無期懲役刑となりました。

当時の日本では、殺人罪には死刑が適用されます。

旧刑法

 第三編 身体財産ニ対スル重罪軽罪

  第一章 身体ニ対スル罪

   第一節 謀殺故殺 ノ罪

第二百九十二条 予メ謀テ人ヲ殺シタル者ハ謀殺ノ罪ト 為シ死刑ニ処ス

未遂罪なら、死刑から一つないし二つ分、罪が軽くなります。

旧刑法

第一編 総則

第九章 未遂犯罪

第百十二条 罪ヲ犯サントシテ已ニ其事ヲ行フト雖モ犯人意外ノ障礙若クハ舛錯ニ因リ未タ遂ケサル時ハ已ニ遂ケタル者ノ刑ニ一等又ハ二等ヲ減 ス

第三章 加減例

第六十七条 重罪ハ左ノ等級ニ照シテ加減ス
 一 死刑
  無期徒刑
  有期徒刑
  重懲役
  軽懲役
 この日本は国民主権の国です。私たちの国です。愛国心にかられた行動や国民主権を守るための行動って、結局はわたしたちの暮らしを守る行動です。法律が公正なプロセスを経て運用されるのは、わたしたちの暮らしにとって大切なことじゃありませんか。だって、そうじゃないと政治家の介入で量刑が判断されるんですよ。海上保安官を擁護したい方は、法の公正な運用の範囲内で、擁護運動をしてもらえませんか。その方がずっと有意義です!

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木目画像報道の自由と守秘義務の衝突木目画像

 この日本には報道の自由があります。これは現行憲法が認める言論の自由の一つです。現憲法が公布された1946年には、報道といえば新聞雑誌にラジオ放送でした。テレビは含まれていません。まだ日本ではテレビ放送をやっていなかったからです(日本初のテレビ放送は1953年のNHK放送)。

 この時代は、報道は会社・機関がするものと受け止められていました。なぜなら、個人が放送機材をそろえたり放送網を組むのは不可能だからです。しかし、ネットの発達で個人の力で報道を行うことが、実際にできるようになりました。

 昨年のイランの大統領選では、現政権の反対派がツイッターを使って報道を行いました。イランのマスコミ報道は大統領が牛耳っているからです。このツイッター報道のおかげで、イラン国内で起こっていることを世界のひとが知ることができました。

 さて、インターネット時代のこんな報道の現状を、今回の事件に当てはめてみましょう。海上保安官がビデオを動画サイトにアップする行為は、これも報道の一種になります。

 つまり、すべての公務員、キャリア官僚も政治家も裁判官も自衛隊の幕僚も、報道の自由を行使できます。実際、自民党の総会をリアルタイムでツイートしていた自民党議員がいましたよね。

 すると報道の自由と守秘義務が衝突します。国民の知る権利が守られているわたしたちの暮らしと、公務員が業務上知りえた秘密を守っているわたしたちの暮らしが、矛盾する状況が生まれるのです。

 そこで、誰もがひとを騙したりせず公正に振る舞いながら、情報流出のせいでこの国が金融恐慌に陥った過去の歴史を挙げてみます。1927年の昭和金融恐慌です。

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木目画像情報流出で金融恐慌に陥った過去の事件木目画像

 1927年の3月14日の国会では、不良債権を抱える銀行を政府が公表することを、野党が要求していました。そこで片岡直温大蔵大臣は、、東京渡辺銀行が本日破綻したことを述べながら、信用j不安を払拭するために政府が合併させるつもりだと、答弁したました。

 しかし、渡辺銀行が破綻した事実はありませんでした。同日、東京渡辺銀行の専務は、資金繰りの相談に大蔵省を陳情しました。しかし、応対に当たった事務次官は休業の相談だと早合点しました。休業情報のメモが審議中に片岡大臣の手に渡り、そのまま公表されてしまったのです。

 片岡大臣の答弁はそのまま報道され、取り付け騒ぎが起こりました。東京渡辺銀行は金策が立ち業務継続が可能だったのに、倒産に追いこまれました。この事件が発端となり、次々に銀行が倒産にしていきました。

 今回のビデオの流出事件は、公正な情報開示のプロセスを欠いています。これが許されるのなら、正義感情や義憤に駆られたなら、政府職員がどんな機密を流出させても、許されてしまいます。撮影された動画を見れて良かったと思うなら、公正なプロセスを通して開示された方が、ずっと良かったと思えるのではありませんか。

 今の日本の情報公開法では、首相が外交関係を損ねると判断すれば、政府情報を開示しないことを定めています。これは国民の暮らしを守るためです。一海上保安官の独断で、この法の公正さが破られました。これが、今回の守秘義務違反の結果です。

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 この日本には憲法があり、人権が保障されています。その中には裁判を受ける権利も含まれています。

日本国憲法

第32条
 何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。
 ビデオを流出させた海上保安官を裁くのも、法の範囲でやろうよ。守秘義務を破った海上保安官がいた。その事件に国民の反響があった。法に則って海上保安官は裁かれた。そっちの方がずっといいよね。
author:taiga, category:-, 18:34
comments(2), trackbacks(0), pookmark
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Comment
>政治家の介入で量刑が判断される
実際に尖閣諸島の事件で量刑どころか起訴自体しなかった(政治介入できることを証明した)のに今更だと思います。

裁判する事には私も賛成します。
しかし裁判をしたからと言ってこの国の起訴されてから裁判されるまでの流れが政治的に公平で中立性があるとは
爪の欠片ほども思いませんし、この事件の裁判が行われたからと言って日本の法治は万全だとか前のように信頼が戻ることはありえないと思います。
もし一連のこういった信頼を取り戻したいと思うなら政治家自身が自ら今回の責任の所在を明らかにし
国民に信を問うための解散総選挙をして立ち直らせるしかないでしょうね。
って, 2010/11/13 10:40 AM
はじめまして。

検察は起訴するでしょうかね。今度こそはするでしょうが、世論に影響を受けて起訴猶予なんてことになると、それこそ国家は破綻しますね。

ぜひ起訴していただいて、司法の判断に委ねて欲しいですね。

願わくば、外国船の船長のときもそうして欲しかったわけですが、今となっては後の祭りです。
小心者, 2010/11/12 1:11 AM









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