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国民は開戦は阻止できるのか(創発を生むミーム 2018/08/01号)
 創発を生むミーム 2018/08/01号の「国民は開戦は阻止できるのか」の全文記事です。
 
2018/08/01号
国民は開戦は阻止できるのか

 安倍政権は解約改憲によって集団的自衛権の行使を認めました。これは日本から開戦できることです。

 安倍政権の憲法解釈では、集団的自衛権の行使には制限があって、日本人の安全を守る場合にのみ、行使できるとされます。安全が脅かされているかどうかは、政府の判断に委ねられます。国民が納得するかどうかは別問題です。例えば、森友加計問題での安倍首相の説明に国民の大多数が納得しないと世論調査では明らかになっています。それでも政権は続投です。だから、集団的自衛権の行使の政府判断に国民が納得しなくても、日本は戦争を開始できます。ただし、内閣支持率が下がれば、内閣不信任決議が通るかもしれません。

「日本人を分断した教育勅語」の記事でも説明したように、集団的自衛権は憲法前文に反します。それなら、集団的自衛権の行使は違憲だと裁判所に訴えでることで、開戦を阻止できるのでしょうか。

 結論から先に言えば、阻止できません。日本の司法制度のせいです。

 世界的に見て、憲法裁判(違憲かどうかを争う裁判)は、抽象的違憲審査制と付随的違憲審査制の二種類があります。前者は、法律が違憲かどうかを争う裁判です。後者は政府の行動が違憲かどうかを争う裁判です。

 日本は付随的憲法裁判を採用しています。そのため、安保法制や解釈改憲が違憲だと思っても、違憲裁判を訴え出ることができません。訴えるためには、政府の具体的な行動が違憲である必要があります。この場合なら、政府による開戦があって、初めて、裁判を起こせるのです。

 解釈改憲や安保法制を違憲だと考える国民の大多数は、これでは手遅れだと思うでしょう。まず、開戦という事実があること。また、一度始めた戦争はずるずるエスカレートして止められなくなると予想されるからです。

 ナポレオン戦争に従軍したドイツ人の軍人のクラウゼヴィッツは「戦争とは何か」を説明した自著の「戦争論」の中で、戦争がエスカレートする理由として三つ上げました。脅威の増大、恐怖の増幅、暴力の応酬です。

 簡単に説明すると、戦争当事国同士で、軍拡のフィードバックが続くのです。脅威(軍事力そのもの)がお互いにフィードバックし合い、恐怖(敵国に攻め込まれる不安)がフィードバックし、そして、暴力(武力行使)がフィードバックし合うのです。

 アメリカのような軍事大国でもこの連鎖から逃れられません。「飽食のテロリスト」の記事でも書きましたが、イラク戦争後、ファルージャでアメリカ人の民間軍事会社の兵士四名が殺害され、ブッシュ大統領は報復のためにファルージャを閉鎖して空爆を命じました。大勢の市民が巻き添えになって殺されました。

 安倍政権は解釈改憲にあたり、日本人の安全を守るためと限定的なケースをあげました。しかし、実際の戦争をかえりみれば、暴力の応酬によって、武力行使がエスカレートすると見るのが妥当でしょう。

 ただし、実際に戦争が始まってから違憲裁判が提訴され、集団的自衛権は違憲だと最高裁の判決が下れば、政権は内閣総辞職に追いこまれるでしょう。そう予期されることが集団的自衛権行使の歯止めになる可能性はあります。ただ、最高裁の判決が下るまで、日時は要するでしょう。また、裁判に絶対はないので、合憲の判断が下る可能性はあります。憲法学者の大多数は集団的自衛権の行使容認は違憲だと考えていますが、学説は法源(判決の根拠)とはならないからです。

 また、戦争を推進したい側は、違憲裁判を起こした人物を「非国民」よばわりして非難するでしょう。ISILによる日本人の人質事件で政府に批判的な人物を、産経新聞はISIL寄りだと中傷した事実があります。それなら、戦時下において反戦を唱えると、敵国寄りだと中傷されるかもしれません。戦前の日中戦争において、政府は「聖戦」だと位置付け、議会で反軍演説を行った斎藤隆夫衆議院議員を衆議院から除名に追いやったことがありました。

 今年3月に内閣府が発表した「自衛隊・防衛問題に関する世論調査」では、2015年の前回調査と比べて、日本が戦争に巻きこまれる懸念する人が10ポイント増え、85.5%(「危険がある」38.0%、「どちらかといえば危険がある」47.5%)でした。

 朝日新聞の記事によると、防衛省は、前回調査後に政府が集団的自衛権を認めたことの影響は「分析が難しい」とコメントしています。

戦争に巻き込まれる危険「ある」8割超 内閣府調査
https://www.asahi.com/articles/ASL3B3SLNL3BULFA002.html

 しかし、安倍首相の主張によれば、米艦に保護された日本人の母子を保護するために、自衛隊がその米艦を守ることが、日本の集団的自衛権の行使です。朝鮮半島有事のさいに、韓国に滞在する日本人約6万人の避難が想定されます(ただし、政府は米艦が日本人を保護することはないと主張を変えました。安保条約のおける日米の役割を定義した日米ガイドラインでは、日米の国民の保護はそれぞれの国が自国民に行うと定められれているからです)。だから、朝鮮半島有事のさいに、日本が米軍を守るために開戦することは、ありそうな事態です。
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