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少数意見の抹殺(創発を生むミーム 2017/12/01号)
 創発を生むミーム 2017/12/01号の「少数意見の抹殺」の全文記事です。
 
2017/12/01号
少数意見の抹殺

 国会の質疑答弁の時間の与野党間の配分について、与党自民党がこれまでの与党2野党8を改め、与党5野党5にすることを要求しました。

 安倍首相は国会議員は国民から権力を信託されているのだから、与党野党の政党の枠組みではなく、国会議員個人の責任を果たすべきであり、それが国民からの負託に応えることだと説明してます。

 これは、個人主義・平等権に基づく主張でしょう。国会議員個人に焦点を当てると、なんだか良いことのように思えてしまいます。

 しかし、国会内の勢力関係の視点で見ると、少数意見の抹殺につながり、個人主義・平等権を妨げてしまいます。

 政治家は議会の中で会派を組んで行動します。政党交付金を国から受け取るためにも、法案提出権を獲得するためにも、5人以上の会派を組まなければいけません。また、首相を選出するためには、衆議院で全議席数の過半数を占めなければいけません(首相を選ぶ権限は参議院にもありますが、衆議院と参議院で割れた時は、衆議院が優先されます)。また、政党が党議拘束をかけて、議員個人に党の方針に従って、法案の可決について投票するように強制することは、当たり前のように起こっています。

 安倍首相が自民党総裁として、党議拘束をかけず自民党の議員ひとりひとりの意見を尊重して、与党を運営するなら分かりますが、実際には公認権と毎年100億円を超す政党交付金の使い道を握っており、安倍一強と呼ばれる状況で、それはないでしょう。

 だから、国会議員個人の責任を果たすことを期待して、質疑答弁の時間配分を変えても、権力による少数意見の抹殺につながるでしょう。

 それでは少数意見をどうして尊重しなければいけないのでしょうか。

 まず、人権思想の下、国民ひとりひとりの幸せが追求される民主主義国家の日本では、様々な立場から意見が国政に反映されなければ、国民の幸福追求が成り立たないからです。

 また、多様な意見を認めれば、ひとつの政策がうまくいかなてくも、代わりとなる政策を国民が選ぶことが可能になるからです。

 みんなと一致団結すれば、大きなパワーになると思っている読者には、多様な意見を認められたならば、てんでばらばらになると思うでしょう(「みんなと一致団結」は日本人にありがちな問題解決策です)。しかし、(「戦争への道を振り返る」の記事でも取り上げましたが」)1931年の満州事変以来15年間に渡って続いた戦時中の15年戦争では、日中戦争は聖戦として位置づけられ、泥沼にはまり、戦争を止められないまま、中国における日本軍の占領地の返還を要求するアメリカのハルノートを拒否して太平洋戦争に突入しました。

 また、小選挙区制の衆議院選挙は死票(落選候補に投じられた票)が多く、議席数は必ずしも国民の信託を正確には表しません。先の総選挙で全有権者のうち、自民党の占める得票率は25%でした。自民党が議席数の3分の2を占めたにも関わらず、与党2野党8の配分の方が、国民の信託を正確に表しています。

 イギリスの政治哲学者のミルは、「多数派の横暴(多数派で決めて、少数派を黙らせること)」という言葉を残しましたが、これでは少数派の横暴です。もちろん、実際には、野党は複数の党に割れているのだから、よりいっそう少数派なわけですが。

 また、国権の最高機関と憲法で位置付けらている国会には、政府を監視するという責任があります。一方で、内閣も国会に対して責任を追うと、憲法に明記されています。それなら、安倍首相も、野党に対して質疑答弁する時間を取らないといけないでしょう。

 安倍首相は、自分が自民党総裁として人事権や政党資金の分配権を握っている自民党の議員たちが、真剣に質疑答弁で内閣を追求しなければいけない、またそれができると思っているのでしょうか。

 森友問題での籠池泰典の国会証人喚問の自民党の質問も、「安倍明恵首相夫人から聞いた話と違う」と籠池氏を責めるもので、国会議員である自民党議員が内閣総理大臣である安倍首相側についたものでした。

 もちろん、裁判の場でも、被告人を追求する検事と被告人を弁護する弁護士に分かれるので、与党の議員が内閣側のつくのも問題ではありません。しかし、与党の議員ひとりひとりに個人主義・平等権に基づいて質疑答弁の時間を配分しても、過去にも自民党の議員はカジノ解禁法案の質疑答弁で時間が余ったのでお経を読んだぐらいなのだから、安倍首相へのごますりに使われるのではないでしょうか。

 11月の特別国会でも、自民党の岸田政調会長が、自分がまとめた総選挙の自民党のマニュフェストのうち憲法改正について安倍首相に質問していました。言ってみれば自民党の宣伝です。今後重要になるだろう憲法改正の国会質疑でも、自民党に偏った時間配分になれば、同じことになるでしょう。

 もっとも安倍首相はよく、行政府の長である内閣総理大臣と政党である自民党総裁の立場の違いを利用して答弁から逃げます。2段落目の答弁を引き出した枝野幸男議員の代表質問への返事も、国会が決めることだから、首相としては答えられないというものでした。ところが、日経新聞の報道によると、与党の質疑時間の拡大は安倍首相の指示だと、萩生田内閣官房副長官が明らかにしています。

 そもそも、安倍首相は自民党の質疑時間を増やすのは、自民党の若手政治家に活躍の機会を与えるためだと説明しています。しかし、自民党の政治家に手柄を立てさせるために、国会を利用するのは、自民党による国会の私物化でしょう。

 そもそも多数派を握る与党側は、金でも権力でも情報でも、野党の優位に立ちます。法案も与党内ですり合わせてから国会に提出され、それから与野党で時間配分されて質疑応答に入ります。最初から与党有利なのです。議席数に応じて時間配分を決めるのは一見、公平のように見えて、与党チートなのです。少数派が尊重される国会運営が必要です。
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