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政治家=マーケッター説(創発を生むミーム 2017/10/01号)
 創発を生むミーム 2017/10/01号の「政治家=マーケッター説」の全文記事です。
 
2017/10/01号
政治家=マーケッター説

 マーケティングとは、消費者の嗜好にあう商品やサービスの情報を消費者に届け、流通を円滑にすることです。この記事では、政治家の一側面をマーケッター(マーケティングの専門家)と捉え、論じたいと思います。何度もうそをつくからです

 そう聞くと、読者の中には「政治家は名誉ある職なのに、企業活動なんかになぞらえるなんて」と怒るひともいるかもしれませんが、最後まで読んで判断してください。

 現在のマーケティング事情をまとめた「ウソはバレる」(イターマル・サイモンソン、エマヌニュエル・ローゼン)では、マーケッターを「(消費者から見て)疑わしい存在」と切って捨てます。「つまらない要素をつけ加えたり、ほとんどの人にとって使い道や意味のない機能や差別化要因をアピール」(同書)するからでしょう。あるいは、消費者をだますからです。安全の代名詞だった自動車メーカーのボルボが、実際には安全性を裏付けるデータがなかったためにイメージを失墜させたケースなどが同書では論じられています。排ガス規制で消費者をだましたフォルクスワーゲンや同じく燃費データで消費者をだました三菱自動車などもそれにあたるでしょう。

 最近の日本の政治でも、(消費税増税分の5兆円のおよそ8割を教育予算に回す意向の)安倍首相が読売新聞のインタビューに答えて、(5%から8%に増税された8.2兆円の)消費税の使い道のうち、8割が財政再建のためだったことについて、「増えた税収の8割を借金返済に使われた」とぼやいていました。しかし、消費税増税の実施の最高責任者は安倍首相なのだから(最高責任者とは首相自身が言っていることです)、これでは言い逃れです。また、そんな安倍首相に都合の良い偏った報道をする読売新聞は「マーケッターより」の新聞社と言えるでしょう。

 また、自民党自体、PR会社と契約して、メディア戦略を練っているそうなので、マーケッターという捉え方は実態に即したものの見方でしょう。

 さて、「ウソはバレる」で疑わしいマーケッターにかわって、信頼できる情報源になっていると指摘されるのが、他人(この場合は、詳しい消費者がそれにあたるでしょう)です。例えば、アマゾンレビューなどのレビューを読むと、ある商品について数十人がレビューをつけていて、購買の参考にできます。

 ただし、商品を実際に購入してからレビューを書く場合と違い、国政選挙の公約が実施されるのは、選挙の後です。だから、(選挙の前から)信頼できるレビューを書くには、相当勉強していないと無理でしょう。

「地方自治は民主主義の学校である」という格言があります。地方自治のように(国政と比べて)住人の目が行き届く政治なら、どんな政策が実施されたら、自分の暮らしにどう影響を与えるのか、学びやすいでしょう。ただ、そんな格言が(欧米に)あっても、日本の地方自治は不活発なので、有権者が政策を学ぶ教材にはなりえないかもしれません。

 また、インターネットの普及した現在においては、消費者が手に入る情報は(企業の広告以外にも)ふんだんにあり、消費者は自発的に継続的に情報を収集するようになったと「ウソはバレる」で指摘されています。

 国政選挙で政治家を選ぶとは、毎年数十兆円にのぼる国庫の使い道を選んだ政治家に委ねることなのだから、自発的に継続的に情報を収集する価値はあるでしょう。

 ただし、インターネットではフェイクニュースが手軽に広がるので注意も必要です。自分に都合の良い情報をうのみにせず、複数の信頼できる情報源にあたる必要があるでしょう。

 それから、自分とは違う意見の持ち主に注目するのも良いでしょう。同じ意見だけを拾っていると、たこつぼの中に入ってしまいます。自分とは違う意見を聞くと思わぬところで視野が開けるかもしれません。ただ、だまされたら元も子もないので、人間的に信頼できるひとを選ぶべきでしょう。

 それから、「ウソはバレる」で、ブランドや消費者の説得が無用となっているマーケッターの仕事として、関心の創出が挙げられています。

 関心の創出の例として、ホワイトバンドプロジェクトが挙げられます。先進国からアフリカ諸国への有償援助の債務棒引きを目指し、その運動の連帯感を示すために白いバンドを腕に巻こうという運動でした。日本でも多数の有名人が出演するCMが話題になりました。ところが、発祥の地の欧米では白いひもや布地を腕にまくだけで良いのに、日本では「業者からホワイトバンドを買うもの」とされました。ウィキペディアのホワイトバンドプロジェクトの項目からの引用になりますが、国内で販売されたホワイトバンドは1本300円、総数で464万本以上でした。そのうち、流通経費(製造から小売りまでの経費。一言にまとめれば、寄付とは無関係の業者の取り分)が約200円、広告費および国内でホワイトバンドプロジェクトを推進した特定非営利活動法人ほっとけない 世界のまずしさ事務局の運営費(ホワイトバンドプロジェクトの推進のための経費)が約57円、約28円がNGOの政治活動資金(実際に運動に使われるお金)、残りの14円が消費税でした。13億円を超す売り上げがあったのですから、そのうち10億円近くものお金が業者の懐を潤しました。

 この総選挙における民進党の希望の党への合流による、「自民か反自民か」という争点化は、まさにマーケッターの仕事とよべるでしょう。世間の関心が「自民か反自民か」に集まりました。世間の関心が選挙に集まるのは、投票率も上がって良いことです。しかし、それだけに終わらず、だまされない必要があるのは、うがちすぎでしょうか。

 また、日本の国政選挙で大きな影響力になるのが「なにかやってくれそう」という期待感です。風とも呼ばれます。しかし、「悪いヤツほど出世する」(ジェフリー・フェファー)で「カリスマ=感動させてくれるひと」と定義されています。自分を感動させてくれるひとに期待するのは、冷静になってから判断すべきでしょう。

 過去にも小泉構造改革の時代に、小泉首相が「改革を止めるな。」とキャッチフレーズにして衆議院の解散総選挙を実施したことがあります。しかし、デフレ不況下の構造改革は格差を拡大する一方で、内需を増やすことはありませんでした。アメリカの不動産バブル頼みの実感なき好景気でした。

 また、ライブドアの社長だった堀江貴文氏がカリスマ経営者としてメディアでもてはやされた時がありました。これからの日本人はこのような金持ちを目指すべきかと賛否が割れました。堀江貴文氏が有価証券報告書の虚偽で逮捕されると、状況は一変しました。例えばベンチャー企業向けの株式の取引が激減しました。

 そうはいっても、感動消費はなくならないでしょう。アメリカのオバマ元大統領の2009年の大統領就任演説について、日本の視聴者の一部から「感動させてくれなかった」という批判の声が上がりました。カリスマの演説に触れて、感動したかったのでしょう。しかし、感動させてくれるからといって、自分の暮らしが良くなると早計するのは、のぼせすぎではないでしょうか。

 やはり、社会の実態をどのように理解しているのか、それをどう変えるのか、その将来はどのような姿を目指すのか、その段取りはどうするのか、といったことを地道に調べる必要があるでしょう。国民の意識が高まらないと、国民をだます政治家はこれからも輩出されるでしょう。

 もちろん、そんなに難しく考えなくても、単純にうそをつく政治家はいます。東京都知事の小池百合子氏は「情報公開は東京大改革の一丁目一番地」と位置付けでいたのに、毎日新聞の調査で、築地移転問題について財源や運営費などを検討した資料が残されていなかった発覚した問題について「それは、私がAIだからです」「最後の決めはどうかというと、人工知能です。人工知能というのは、つまり政策決定者である私が決めたということでございます」とごまかしました

「自分がAIだなんて、素直に受け止めると妄想?」「AIであることが約束を破る口実になるSFって存在したっけ?」と思いますが、釈明に窮して言葉を選び損なったのでしょう。ここで「いや、そうはいっても、こういうことをしてくれるだろう」と有権者が忖度することは、企業に対してはしません。だから、政治家に対しても有権者は厳しく吟味しないといけないでしょう。
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