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企業家を縛る規制を撤廃(創発を生むミーム 2017/09/01号)
 創発を生むミーム 2017/09/01号の「??企業家を縛る規制を撤廃」の全文記事です。
 
2017/09/01号
企業家を縛る規制を撤廃

 国があって企業家がおり労働者があります。

 労働者への待遇について、国が企業家を規制したものが労働基準法です。労働者を守るために、企業家はこの法律を守らなければいけません。そのひとつに労働時間の上限があります。企業家が労働者を働かせられる時間は週40時間までであり、それ以上働かせようとすれば、賃金を25%割り増しした残業代を支払わなければいけません。

 そして、企業家たちの主張をくみ取り国が進めているのが、この規制の撤廃です。それが「高度プロフェッショナル制度」(通称残業代ゼロ法案)です。

 企業家たちは勤労意欲のある労働者のために、残業規制をなくそうとポジション・トーク(自分の利益ための偏った主張)をしています。しかし、実際に規制が解除されるのは、労働者を縛る法律ではなく、企業家を縛る法律です。

 残業代ゼロ法案を主張する経団連の2005年の提言を読むと、頭脳労働が主流の現在のサラリーマンの働き方では、工場で管理されて働いていた1947年の労働基準法制定当時の働き方にはそぐわないとあります。しかし、それで改めるのが、企業家を縛っていた残業規制なのだから、自分に甘い意見です。

経団連の「ホワイトカラーエグゼンプションに関する提言」https://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2005/042/teigen.pdf

 経団連の提言にはフレックスタイム制でも「労働時間にとらわれない自由な働き方」には足りないとしています。それなら、何なら経団連は満足するかというと、残業規制が撤廃されたらです。企業家への規制が撤廃されたら満足するのです。

 また、管理監督者(いわゆる管理職)の規定について「深夜業の割増賃金の支払いが適用除外とされていないという点で、真の意味における労働時間の適用除外とはなっていない」と主張しています。どうあっても、経団連は残業代を払いたくないのでしょう。

 経団連は残業規制撤廃について「働き方の選択肢を増やし、労働者の勤労意欲に十分に応えつつ、生産性を向上させ、我が国産業の国際競争力の強化にも繋がるホワイトカラーに適した労働時間制度」が必要だと主張しています。

 経団連は、アイデアは自宅でも生まれるから、労働時間と非労働時間の区別があいまいだと主張しています。しかし、それならフレックスタイム制と成果主義で十分であり、それでは足りないという経団連の主張には根拠がありません。

 また、非効率でも残業をたくさんした労働者の方が、効率的に仕事を進める労働者より(残業代の分で)高賃金になり、優秀な労働者の意欲を削ぐと経団連は主張しています。しかし、それなら成果主義を導入すれば良く、企業家への規制を撤廃する必要はありません。こんな理由で残業規制を撤廃するのは、労働者全体の待遇切り下げです。なお、経団連の前述の提言によれば、成果主義を導入している企業は全体の55%です。

 また、「社会生活基本調査」によれば、2011年の国内の正規雇用の男性の週労働時間は53.1時間、女性は44.1時間でした。残業が前提の待遇です。だから、残業代ゼロ法案が通れば、必ず賃金は下がります。正社員の男性の場合、(ボーナスや手当を入れず)単純に計算して、およそ4分の1の減収になります。

 また、「子供もできたし、住宅ローンも抱えているから、できるだけ仕事を引き受けて残業代を稼ぐぞ」という小市民的なワークライフもできなくなります。少数の者がオーバーワークになるため、本当は良くないことですが、こういうひとが日本の現場を支えているのではないですか。日本は戦略不在現場頼みの国なのに、これでいいとは思えません。経団連が「これが経費節約になる。これで良いんだ」と考えているなら、タコ足食いのようなものでしょう。

 政府は成果に応じて賃金が決まるようにようになると宣伝していますが、現在の制度でも、企業は同じことができます。また、成果主義の導入は条文に書いてありません。企業に成果主義を義務付けるような制度ではありません。そもそも、前述の経団連の提言を読んでも、「労働時間、休憩、休日及び深夜業に係る規制の適用除外とする」とあるだけで、成果主義を導入するとは書かれていません。

 政府の今回の(これまでに同様の法案は何度も流れています)残業代ゼロ法案は年収1075万以上の専門職に対象が限定されています。しかし、前述の経団連の提言では、年収400万円以上を残業代ゼロとするとあります。だから、将来的には、対象が拡大されるでしょう。

 経団連には、熱心に働くアメリカのビジネスマンのように、日本の意欲のあるサラリーマンにも働いてもらいたいという主張もあります。しかし、こんなのは残業代を切り捨てるためのポジション・トーク(自分に都合よく流す偏った情報)です。日本とアメリカでは労使関係が違います。アメリカのビジネスマンは、一年限りの査定で毎年の年棒が決まります。メジャーリーガーの年棒のようなものです。日本のように年功給や過去の貢献度で決まることはありません。毎年、ゼロベースから査定されます(ただし、功労の概念が全くないわけがありません)。日本でなら、外資系がそれにあたります。しかし、こんな査定制度を持ちこまないで、残業規制だけ撤廃するなら、サービス残業させたい放題になるでしょう。

 企業家に良心があるのなら、勤労意欲があって働きたい、そうやって企業に貢献したい労働者に報いることを考えるべきでしょう。しかし、意欲ある労働者の上にあぐらをかいて、労働者全体の待遇を切り下げるのは、企業家の身勝手で政治を歪めていることに他なりません。
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