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市民を監視下における共謀罪(創発を生むミーム 2017/04/01号)
 創発を生むミーム 2017/04/01号の「市民を監視下における共謀罪」の全文記事です。
 
2017/04/01号
市民を監視下における共謀罪

 司法は、「法と良心」に従えば一般市民を摘発できます。それが安倍政権の進める共謀罪です。正確な法律名はテロ等準備罪ですが、この記事では世間に通りのいい共謀罪の名を使います。

 安倍首相はテロリストの摘発のための共謀罪だと国民に説明しているのに、どうしてそうなるのでしょうか。それは、法律の条文はテロリストに限定するようには書かれておらず、一般市民も対象にできるからです。

 憲法第76条は、「すべて裁判官は、その良心に従ひ独立してその職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される」と規定されています。だから、裁判官は法には従わなければいけません。

 そして、日本の司法では、立法趣旨は法源になりません。法源とは、裁判官が判決を下す根拠となる法のことです。憲法や法律や判例などがそれにあたります。しかし、立法趣旨(この場合は、テロリストを摘発するためという安倍首相の説明)は司法の現場では顧みられません。

 同じようなことに、国旗国歌法があります。国旗国歌法を推進した政治家たちは「国旗国歌を強制することはない」と国民に説明したました。これが立法趣旨です。

 それではどうなったでしょうか。地方教育の現場において教員の国歌斉唱が強制され、逆らった教員が処罰されました。この処罰が適法かどうかをめぐって裁判になり、裁判官は処罰は適法だと判決を下しました。日の丸君が代は国旗国歌法でそれぞれ国旗国歌と定められていることが判決の根拠でした。

 このように、立法趣旨は、司法では考慮されません。立法趣旨を無視した、法律の条文そのものが考慮されるのです。そして、政府の条文は、テロ組織に限定したものではなく、一般市民全体を対象にしたものです。

 政府は共謀罪の適用対象になるのは「組織的犯罪集団」でそれは「重大犯罪を実行するために結合している団体」だと説明しています。しかし、日弁連の指摘では、法律には「常習性」や「反復継続性」などの要件がなく、組織犯罪に限定される法律ではないとされています。また法的には、「二人以上で計画」したら共謀罪で摘発の対象となります。テロリストと一般市民を分けるようには、法律はできていません。

   なお、実際の条文は下記のようになります。

”第六条の二  次の各号に掲げる罪に当たる行為で、組織的犯罪集団(団体のうち、その結合関係の基礎としての共同の目的が別表第三に掲げる罪を実行することにあるものをいう。次項において同じ。)の団体の活動として、当該行為を実行するための組織により行われるものの遂行を二人以上で計画した者は、その計画をした者のいずれかによりその計画に基づき資金又は物品の手配、関係場所の下見その他の計画をした犯罪を実行するための準備行為が行われたときは、当該各号に定める刑に処する。ただし、実行に着手する前に自首した者は、その刑を減軽し、又は免除する。”

 テロリストに限定されていませんし、一般国民を除外した条文でもありません。

 それでは、「テロリストを摘発するため」という安倍首相の説明はなんなのでしょうか。空手形を切っているのです。将来の司法のあり方を国民に約束するものではありません。

 共謀罪は227の法律に適用されます(その中には著作権法や文化財保護法が含まれます)。政府は「サリンガスなどの化学兵器散布に対処するため」「ハイジャックに対処するため」などと説明してますが、それぞれサリン等人身被害防止法やハイジャック防止法で対処できると野党から反論されています。

 また、政府は著作権侵害やキノコ採りなどを共謀罪で裁く理由として、テロリストの資金源になるからと説明しています。しかし、そのために、一般市民がそんな犯罪の相談をすれば、司法が摘発するのが共謀罪です。例えば、メディア批判のための資料作りににネット動画やネット記事をダウンロードしようと相談するだけで、「組織的犯罪集団」として摘発されます。

 政府は計画だけでなく「実行準備行為」をしなければ共謀罪で摘発されないと説明しています。先ほどの例なら、パソコンを用意するだけで実行準備行為になるり、メンバー全員が逮捕の対象になります。

 例えば、アメリカでの共謀罪による著作権侵害の摘発の例として「誰が音楽をタダにした?」(スティーヴン・ウィット)に次のケースが書かれています。

 90年代から00年代にかけて、業界最大手のユニバーサル・ミュージックの工場から新作のCDを盗み出すルートを開拓した海賊版業者は、リリース前の新曲をリークすることができ、また物量でも、当時、海賊版として出回っていたCDのリーク元をたどるとその多くがこの組織にたどり着きました。

 海賊版のリークについてネットで打合せしていたため、著作権侵害の共謀罪の容疑で組織は摘発されました。政府なら、テロ組織の資金源になるかもしれないから(実際の組織はテロとは無関係です。念のため)、共謀罪が必要だと主張するかもしれません。しかし、テロ組織を狙い撃ちにするものではありません。

 政府は「国際組織犯罪防止条約に締結してテロを未然に防ぐ」「共謀罪がなければ五輪が開けない」と主張しますが、この条約はマフィアなど経済犯罪対策でありテロ対策ではなく、また加盟国の刑法の原則(この場合なら「意思」を裁く共謀罪)の変更を強いるものではありません。この条約の条文にも、適用対象の文句に金銭的利益ためと書かれており、テロリストを対象としたものでもありません(ただし、禁固4年以上の重大犯罪であれ、金銭的利益がでなくても、適用対象になります)。

 また、国際社会にあるテロ防止関連条約のうち、国連が定めたもの5つ、国連外のもの8つすべてに、日本はすでに加盟しています。

 また共謀罪がなければ五輪が開けないというなら、「なぜテロ組織に限定した法律にしないのか」という疑問がわきます。

 戦前にも、共産主義や無政府主義の取り締まりのためと説明された治安維持法が、労働運動・民主主義・自由主義の取り締まりのために使われた過去があります。

 意思を取り締まる共謀罪には同じ危険があるでしょう。「一度、例外をつくれば、例外でなくなる」といいます。例外が前例になり、拡大解釈されるからです。政府の共謀罪にも同じ危険があります。総務省が示した見解でも、取り締まりの対象になる組織的犯罪集団 について「もともと正当な活動を行っていた団体も、結合の目的が犯罪を実行する団体に一変したと認められる場合は、組織的犯罪集団にあたる」となっており、組織的犯罪集団と一般人の境界は(司法の現場では)あいまいになっています。

 そして、組織的犯罪集団かどうかを判断するのは、監視される市民ではなく、警察です。石破茂元自民党幹事長が国会前のデモをテロリスト扱いしたことがあり(のちに撤回)、権力の暴走が懸念されます。

 金田法相が「組織的犯罪集団と関わりがない一般人は捜査対象にならない」と国会答弁しているので、市民には関係ないと思うかもしれません。しかし、金田法相の発言には、「組織的犯罪集団と関わりがなければ」という仮定があって、実際に関わりがないと判断するのは、捜査機関だということが、説明から抜け落ちています。

 そもそも一般の刑事捜査でも一般人を捜査対象にするものです。しかし、共謀罪の条文には捜査対象をテロリストに限り、一般人を捜査対象から外す担保となるものがありません。

 テロ対策のためには共謀罪で市民を監視する必要があり、それに反対するのは平和ボケという意見もあるでしょう。しかし、アメリカはテロ対策のために、2001年の9.11テロ以降から2011年までに1兆ドル(円ではなくドルです)を注ぎこんできましたが、それでもテロを完全に防げていません。孫子も、敵対勢力には疲弊させろということを書き残しています。

 国民の権利が制限され治安が強化されたら、そうでない場合より、テロは起こりにくくなるでしょう。しかし、中国のような国民の人権が制限された警察国家でもテロは起こっています。共謀罪を成立させても、(例えばオリンピックなどで)テロを防げるものでもないでしょう。欧米におけるイスラム原理主義勢力の影響を受けたテロリストたちは、高学歴で中流生活を送る一般市民がネットなどで感化されテロに走るのがパターンであり、警察が事前に情報を収集してテロを察知できる組織の体をなしていません。

(テロ対策のすべてがムダとは言いませんが)テロ対策で国が疲弊したら、喜ぶのはテロリストです。

 日本もテロ対策のためにと、市民を監視する社会になれば、自由な活動を逼塞させれば、テロリストの思うつぼです。
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